法人による不動産売却は何が違う?税金の扱いについて解説

法人による不動産売却は何が違う?税金の扱いについて解説

不動産を売却するのは個人だけでなく、企業などの法人が売買契約を結ぶこともあります。
しかし、個人が不動産を売却するときと法人が不動産を売却するときとでは税金の扱いが異なるため注意が必要です。
今回は、法人が不動産を売却するときにかかる税金は個人とどう違うのか、税金の計算方法や節税対策について解説します。

法人による不動産売却の税金は個人とどう違うのか

法人による不動産売却の税金は個人とどう違うのか

個人と法人では、税金をはじめ不動産売却に関するさまざまな規定や慣例が異なります。
そのため、この違いを理解していないと売却後の税金の計算ができません。

個人の不動産売却の場合

個人による不動産売却の場合、税金が課されるのは売却で得られた利益である譲渡所得に対してです。
譲渡所得とは、不動産の売却代金から取得費や売却にかかった費用などを引いて残った利益を指します。
これにかけられる税金を譲渡所得税と呼び、主に所得税と住民税の2種類です。
所得税の一種ではありますが、個人の給与所得と一緒に計算するのではなく不動産売却の利益については別途の税率が適用されます。
譲渡所得税の税率は不動産を所有していた期間によって異なり、5年以下で短期譲渡所得、5年超で長期譲渡所得です。
長期譲渡所得のほうが、短期譲渡所得よりも譲渡所得税の税率が低くなります。

法人による不動産売却の場合

法人が不動産売却をおこなった場合、税金はその売上に個別に課されるわけではありません。
不動産売却の利益は、その法人の売上に合算されてまとめて課税されます。
法人が不動産を売却するとかかる税金は、法人税、法人住民税、法人事業税、印紙税、消費税です。
法人税は法人の事業の利益に対して課される税金であり、赤字であれば納付の必要はありません。
法人住民税は、法人の事務所や事業所がある自治体に納める税金です。
法人事業税は、事業で収益が出たときに自治体に対して納める税金であり、赤字であれば法人税同様、納付する必要がありません。
印紙税は不動産の売買契約書にかかる税金であり、契約の締結時に収入印紙を購入して書類に貼り、押印して納めるのが一般的です。
個人が売主であれば不動産を売却しても消費税は発生しませんが、売主が法人であるときは建物にのみ消費税がかかります。
そのため、個人が不動産売却するときよりも法人が売却するときのほうが消費税分価格が高くなるのです。

法人の不動産売却における税金の計算

法人の不動産売却における税金の計算

法人の不動産売却における税金の計算方法では、まず売却代金とほかの事業の利益とを合算する必要があります。
不動産の売買が会社の事業でなくても、売却した不動産が会社の所有物であれば利益を合算しなければなりません。
ただし、不動産売却で発生する税金のすべてが合算した利益に課されるわけでない点に注意が必要です。

法人税

法人税は法人の事業利益に課される税金ですので、不動産売却の利益も合算したうえで計算します。
損益をまとめて合算するため赤字が発生することもあり、不動産売却は黒字でもほかの事業の赤字で相殺されることもあるでしょう。
最終的な損益が赤字であれば法人税は課税されませんが、黒字であれば不動産売却で売却損が出ていても課税されます。
法人税を計算するための計算方法は、以下に示す式のとおりです。
法人税額=事業所得×法人税率-控除金額
税率は法人の種類や規模、課税所得額によって変動するため一定ではありません。

法人住民税

法人住民税は事業所がある自治体のインフラを使用するための料金です。
法人税額に特定の税率をかけた法人税割をもとに計算されるため、売上の影響を受けます。
法人住民税を計算するための方法は、以下に示す式の通りです。
法人住民税=法人税割+均等割
なお、法人税割の税率は都道府県で1.0%、市町村で6.0%になっています。
均等割は、法人の資本金額や従業員数などから計算される税金です。

法人事業税

法人事業税は事業で収益が出たときに支払う税金であり、赤字であれば納付する必要はありません。
法人運営で使用している自治体のインフラを維持する費用として支払います。
法人事業税を計算するための方法は、以下の式に示すとおりです。
法人事業税額=事業所得×法人事業税率
法人事業税の税率は法人の種類や課税所得によって区分が決まり、都道府県によって異なる税率が設定されています。

印紙税と消費税

法人による不動産売却でも、個人の売却同様、印紙税や消費税が課税されます。
ただし、消費税については個人とは異なり売却する建物にも課されるため注意が必要です。
印紙税は、契約書に記載された売却代金の金額に応じて区分分けされた税額があります。
該当する税額分の収入印紙を購入し、契約書に貼り付けて押印しなければなりません。
消費税については、売却を依頼した不動産会社への仲介手数料や手続きを依頼した司法書士などへの報酬にも含まれます。
建物の売却代金に対する消費税は、買主が支払ったものを法人が代行して納付するのです。

法人による不動産売却で節税するには?

法人による不動産売却で節税するには?

法人による不動産売却では、さまざまな種類の税金が課されるため最終的な利益はどんどん減ります。
一方で、法人は個人と同じような方法での節税はできません。
法人ならではの方法で節税する必要があるため、それぞれのポイントを押さえておくことが大切です。

課税所得を分散させて税率を下げる

法人による不動産売却で節税するのであれば、売却で出た課税所得を分散するのがおすすめです。
個人でおこなう不動産売却と異なり、法人では利益を損金から差し引けます。
そのため、不動産売却における利益はほかの所得に分散させて税率を下げることが可能です。
たとえば、退職する役員がいるタイミングで不動産を売却し、役員退職金を支給することにより税率を下げられます。
この方法では、退職金を受け取る役員側の税率も低くなるでしょう。

不動産や設備に投資する

法人に課される税金を節税するためには、新しい不動産を購入したり、設備投資をおこなったりするのがおすすめです。
不動産は減価償却によって、設備は特別償却によって償却費を費用として計上できるため、利益に対する節税効果があります。
新規物件を購入すれば、事業の拡大や資産の更新にもなるでしょう。
法定耐用年数が短い木造や軽量鉄骨造の建物のほうが高い節税効果を得られます。
設備投資における特別償却では、減価償却費にさらに償却費を上乗せして経費を計上可能です。
A類型と呼ばれる最新モデルまたは生産性の向上を年平均で1%以上向上させる最新設備、B類型と呼ばれる生産ラインやオペレーションの改善に関する設備を購入すれば特別償却できます。

法人ならではの特別控除を利用する

不動産売却の利益にかかる法人税を節税するには、法人向けの特別控除を活用するのがおすすめです。
法人では、自社の設備投資や人材投資をおこなうことにより、税額控除を受けられる制度が用意されています。
たとえば「中小企業投資促進税制」を活用すれば、一定の設備を取得したときに特別償却や税額控除の適用を受けられます。
また「人材確保等促進税制」では、新規雇用者の給与支給額が前年度より増加しているとき、その増加額の一部が法人税額から控除される仕組みです。
これらの制度の適用条件や控除率は、設備の種類や雇用状況などによって異なるため、詳細については税理士や専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

法人による不動産売却では、個人のときには発生しなかったさまざまな税金が発生します。
一方で、個人と同様に課される税金もありますが、消費税については扱いが異なるため注意が必要です。
法人に課される税金を節税したいときは、利益を分散させられるような投資をおこなうと良いでしょう。